2026年門脈圧亢進症学会抄録 「経頸静脈肝内門脈大循環短絡術を施行後も治療に難渋した難治性腹水の一例」 症例は73歳男性。他院でアルコール性肝硬変の治療中で、食道静脈瘤に対して内視鏡的食道静脈瘤硬化療法歴がある。20XX年に腹水が増加し食事量が低下した。利尿剤への反応も乏しく難治性腹水の診断で腹水濾過濃縮再静注療法(CART)を導入。本人希望もあり当院に経頸静脈肝内門脈大循環短絡術(TIPS)目的で紹介。門脈血栓がないことを確認し、20XX年12月にTIPSを施行。術後合併症なく退院したが、腹水の改善はなくCARTから離脱できなかった。ステント狭窄を疑い、20XX+1年1月にステント再調整目的で血管造影を施行。シャント狭窄はなかったが、肝内門脈も僅かに造影された。そのため、頭側にステントを1cm延長した。その後、腹水の増加速度は低下しCART間隔も延長できたが、腹部膨満は持続し食事量は改善しなかった。20XX+1年4月に就寝中に右胸痛と呼吸苦が出現し、当院救命救急センター搬入。胸腹部造影CTで以前はなかった右胸水の急激な増加があった。多量腹水による横隔膜損傷を疑い、審査腹腔鏡を同日に施行も損傷部位は特定できなかったため胸腔ドレーンを留置。腹水は以前よりも減少し、食事摂取量は著明に改善。血清アルブミン値もTIPS後は2.0g/dL前後だったが、2.9g/dLまで上昇した。それに伴い状態は改善し、胸腔ドレーン抜去後も胸腹水の増加はなくほぼ消失し、CARTも離脱した。稀有な症例を経験したので今回報告する。